「届いた商品が破損していました。返品について相談したいです。」この相談に、v1.4.2 までの返信案は2行ほどで「【要確認: …】」と書いて止まっていました。v1.5.0 で私たちは、返信案を最後まで書かせ、約束になる文だけを店主様に決めてもらうことにしました。Shopify のAI接客アプリ SUGOI Chat の v1.5.0 は、スタッフに引き継いだ問い合わせの返信案を最後まで書き、店のルールに根拠のない約束をオレンジで示して、店主様が確かめるまで送れないようにします。
2行の下書きでは、だれかが書き直すことになる
冒頭の相談は、私たちが架空のお店で引き継ぎの流れを試すときに使っている文です。これまでの返信案は、お店の情報にないことを書かないように、分からない所へ印を置いて短く終えていました。推測で答えないというチャットの決まりを、返信案にもそのまま当てはめていたからです。
けれど破損の相談なら、お詫びと、状況の確かめ方と、この先の流れまで書いて、ようやく返信になります。2行の下書きを受け取った店主様は、別の AI を開いて一から書き直すしかありません。安全のつもりで書かせなかった部分が、そっくり店主様の手間として残っていました。
決めるのは人のまま、決めるまでの手間は先に済ませておく。私たちが考える「AI が人を助ける」はこの形で、v1.5.0 の返信案はそこから作り直しました。
約束になる文にだけ、オレンジの印を付ける
v1.5.0 の返信案は、書き出しから結びまで書き上げた形で届きます。そのうえで、交換・返金・日付・価格のように、お店のポリシーと店のルールに根拠のない約束の文をオレンジ色にして、番号を振りました。色を表示できないメールや Slack では、同じ箇所を〔1〕…〔/1〕で囲みます。
架空のお店「こよみ茶舗」で、こんな相談を試しました。
昨日届いた急須のふたが割れていました。明後日の来客で使いたいので、明日までに交換品を発送してもらえますか?送料は無料にしてもらえますよね?
返信案はお詫びから確認のお願い、結びまで書き上がり、そのうえで「明日までに交換品を発送できるかは、写真を確認後にご案内します」と「送料を無料にできるかも、あわせて確認してご案内します」の2文に印が付きました。どちらも、お店のルールに書いていない約束につながる文だからです。
印の付いた箇所ごとに、店主様は「直す」か「このままでよい」を選びます。決めていない箇所が一つでも残っていれば、送信の確認に進めません。メールのリンクから開く返信ページでも、同じように選びます。約束を負うのはお店で、送ったあとに「AI が書いたので」とは言えないからです。
印には、別の判定用 AI(TypeSafe Jev、答えないときは Cloudflare Workers AI)による2回目の確認も重ねています。この確認は印を足すだけで、消すことはしません。確認が1件増える手間より、見落とした約束がお客様に届くほうが重い。そう判断しました。
覚えさせるのは、店主様が選んだ文だけ
管理画面の問い合わせの詳細から返信を送ると、「次回から、この内容を使いますか?」と出ます。このままで送った文、直して送った文、書き出し、結び。そこから店主様が選んだものだけが、「店のルール」画面の「返信案だけで使うルール」と「返信の型」に入ります。次の返信案はそれを根拠として使うので、同じ内容の文には印が付きにくくなります。
送った文を自動で全部覚えさせなかったのは、その場かぎりの対応まで「お店の決まり」になってしまうからです。覚えさせた内容は、「店のルール」の画面であとから見直しも削除もできます。
それでも、この仕組みが保証しないことがあります。オレンジの印は見つけた箇所を示すもので、印のない文が正しいことまでは約束しません。店のルールに書かれていない条件を、返信案が知っているわけでもありません。返品の条件を決めて書いておくのは、店主様の仕事のままです。2回目の確認役がどちらも答えないときは、その確認なしで案が届きます。覚えさせた決まりは返信案だけで使うもので、店頭のチャットの答えは変わりません。
店主様がやることは4つです
- 設定の「スタッフへの引き継ぎ」をオンにして、通知を受け取るメールアドレスを確かめる(引き継ぎは Standard プラン以上の機能です)
- 「店のルール」に、返品・交換の条件など、約束の根拠になることを書いておく
- 引き継ぎが届いたら、メールのリンクか管理画面の「問い合わせ」から返信画面を開き、オレンジの箇所を一つずつ決めて送る
- 送ったあと、管理画面の問い合わせの詳細で、次も使いたい文・書き出し・結びだけを選んで保存する(書き出し・結び・署名は「店のルール」の「返信の型」に直接書くこともできます)
細かい条件は、マニュアルの「引き継ぎ」のページにまとめています。
v1.5.0 は店主様の画面に届けたばかりで、実際のお店でオレンジの印がどのくらい付くのか、どこまで覚えさせると使いやすいのかは、まだ分かっていません。問い合わせから返信までの流れの中で、作った私たち自身がいちばん手応えを感じている変更です。
書くのは AI、約束を決めるのは店主様。次に引き継ぎが届いたら、オレンジの箇所から読んでみてください。
SUGOI Chat は Shopify のAI接客アプリです。使い方は公式マニュアルにまとめています。チャットの動きは、デモストアの「こよみ茶舗」(sugoi-wa.myshopify.com・開くときのパスワードは s)でも試せます。
執筆:ウープス有限会社 SUGOI 開発チーム
