Shopifyで越境ECをつくってみよう! アプリ・テーマ・設定を詳しく解説!

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近年の円安の影響も受けて、自社の商品やサービスを海外へ売り出してみようという考えを持つ事業者が、年々増えていると思います。

商品やブランドを売り出す方法はさまざまで、SNSや動画サイトを用いた宣伝などで、容易に国境を越えて消費者に訴えかけることができます。

では、実際に商品を海外で販売する方法とはどのようなものでしょうか。

ここで一つ、インターネットを利用した販売が最初の一歩として、低コストで始められる方法です。これは海外への販売を視野に入れたECを指し、一般に越境ECと呼ばれます。

自社のECストアを作成するためのプラットフォームは多数存在しますが、

その中でShopifyは現在、越境ECに最も適していると言われているプラットフォームです。

Shopifyには、海外の顧客に向けて販売するための機能が多数用意されています。

以前の記事「グローバルな成功を掴め!Shopifyの越境ECサイト構築術と成功のポイントとは」でも紹介しました。

今回は、Shopifyが具体的にどのような機能を持つのか、詳しくご紹介します。

海外への販売に向けての言語の壁 これまでのECサイトの限界

ECサイトを海外向けに作成する際に直面する最初の障壁として、言語が思いつくでしょう。英語やスペイン語とは違い、日本語は日本以外で使われることはほとんどありません。

商品そのものは日本で売られているものそのままでも良い!というお客様でも、購入のプロセスはやはり現地の言葉の方が助かります。

ストアの言語が日本語のままでは、海外の消費者に理解してもらうのは難しいかもしれません。

では、海外向けのストアを別途新たに作成する必要があるのでしょうか?もしそうなってしまうと、サイトごとの在庫管理や運営費用がかかってきます。

でも実は、Shopifyではそういった言語の障壁を巧みに克服する解決策を提供しています。

顧客に合わせた言語でストアを表示!ストアの言語翻訳

ストアには様々な「ワード」が存在します。例えば、「カートに入れる」や「チェックアウトに進む」といった、購入のために必要なフレーズがあります。

さらに、ECサイトでは「検索」や「アカウント」などの言葉も頻繁に使われますね。

Shopifyのストアでこういった「ワード」を、サイトを訪れたお客様に合わせて自動で置き替えることが簡単にできるようになっています。

デフォルトテーマのコンテンツ

こういったストアでの買い物をナビゲートするワードは、Shopifyでは「デフォルトテーマのコンテンツ」と呼ばれており自由に翻訳編集することができるようになっています。 そして、後に紹介する「マーケット」(どの国のお客様か)に応じて置き換えすることができます。

この編集にはプログラミングなどの知識は必要なく、Shopifyの管理画面からだれもが簡単に変更・編集することができるように設計されています。

注意

ただし、どのワードがこの「置き換え」に対応しているかはShopifyのテーマによって異なるため、その点にはご注意ください。

MISEルテーマでは、サイトで買い物を行うために必要なワードは基本的にすべて置き換え可能なようにプログラムされています。

テーマファイルの中に言語翻訳のためのファイルが含まれていて、その情報を参照することによりワードを置き換えるという仕様になっています。

MISEルテーマでは最初から主要な言語翻訳用ファイルが複数含まれていて、必須となるような項目や現地語が好ましいような翻訳ワードがすでに入っています。

ごく一部ですが、例えば下記のようなものです。

現在MISEルでは役13の主要な言語翻訳ファイルが含まれています。

日本語 英語 中国語
チェックアウトに進む Proceed to checkout 進行結算
アカウント My Acount 我的帳戶
新規登録 Sign up 註冊
すべての商品を見る View all products 查看所有產品

またサイトの雰囲気などに合わせて変更することももちろん可能ですし、必要な言語ファイルを自由に追加していただくことも可能です。

こちらの変更もプログラミングなどの知識がなくても簡単に行えるようになっています。

商品説明も多言語に! Shopify 「Translate & Adapt」

Shopifyには、ストアの機能を拡張できる「Shopifyアプリ」というシステムがあります。

ちょうどスマートフォンにアプリをインストールし、LINEメッセージを送信したりYouTubeを視聴したりするのと同様に、Shopifyのストアでも必要なアプリを選んでインストールすることができます。

Shopifyアプリは様々な種類があり、Shopifyが提供するものから他の企業が提供するものまで様々です。

その中にはShopify公式が提供する「Translate & Adapt」という、ストアを多言語対応にするアプリも含まれています。

このアプリを使用すれば、先ほど述べたナビゲーションのワードだけでなく、商品の説明なども訪問者の言語に合わせて表示することが可能となります。

https://www.youtube.com/watch

「Translate & Adapt」の便利な自動翻訳機能

「Translate & Adapt」の優れた点は、ただ単に異なる言語への編集や表示を可能にするだけでなく、自動翻訳により、ボタン一つであっという間に希望の言語に翻訳・編集することができるところです。

これはAIによる自動翻訳で、翻訳の精度が必ずしも完璧ではないとはいえ、翻訳にかかる時間を大幅に短縮することができます。

以下は、自動翻訳を用いて、日本語で書かれた元の商品説明を翻訳した例です。

もちろん自動翻訳後も、気になる部分は個別に編集することもできますし、特定の言語で使用するユーザーにだけ表示されるような文章説明の追加も可能です。

さらに、「Translate & Adapt」は商品説明だけでなく、ブログ記事やページなどの他のコンテンツも翻訳することが可能です。

編集画面は下記のように左側にオリジナルの言語、右側に翻訳したい言語が並んで表示され、操作もわかりやすくなっています。

この便利な「Translate & Adapt」は最大2つの言語まで自動翻訳が無料利用できます。

手動で行う場合は必要な数だけ翻訳が追加できます。

他の言語アプリも充実

Shopifyでは、「Translate & Adapt」以外にも、他の企業が提供する翻訳アプリやサービスが充実しています。

自動翻訳だけでは不十分と感じる方には、アプリの操作画面から直接プロの翻訳家に依頼するサービス付きアプリなども提供されています。

より精緻な翻訳が必要な商品やサービスを持つ方や、海外市場に本格的に進出を考えている方は、これらのサービスの利用も検討する価値があります。

マーケット設定

Shopifyで越境ECに取り組む際に、対応できることは言語翻訳だけにとどまりません。Shopifyでは、「マーケット」という機能を使って、国や地域ごとに異なる設定を割り当て、ブランドの顧客購入体験を管理することができます。先ほど紹介した言語翻訳も、国や地域ごとに異なる顧客購入体験の管理の一環と言えます。

Shopifyのマーケット機能を使用すれば、アメリカ、メキシコ、インドネシアなどの国や地域ごとに異なる設定のグループを作成することが可能になります。こうしたグルーピングにより、国や地域ごとに合わせたドメインやSEOの最適化が容易になります。

たとえばアメリカとドイツでは、使用する言語や通貨が異なりますが、Shopifyのマーケット設定を使用すれば、それぞれに応じた国際ドメインやSEO対応が簡単にできます。例えば、日本では「xxxxx.co.jp」、アメリカでは「xxxxx.com」、ドイツでは「xxxxx.de」などと設定し、各国ごとに信頼度やドメインパワーを向上させることができます。

マーケットに応じて現地通貨で表示販売する

Shopifyでは、マーケット設定に対応した多通貨表示も可能です。為替レートに基づき、現地通貨に変換して表示することができます。ただし、ここで注意が必要なのは、これには決済においてShopify Paymentsサービスの利用が必要となる点です。ですが、Shopify Paymentsサービスは、Shopifyの基本プランに含まれていますのでご安心ください。

さらに、たんなる現地通貨での表示だけでなく、為替変動を見越した調整設定や、現地市場に合わせた価格戦略も可能です。一つのサイトで、各マーケットに合わせた価格設定や為替変動への自動調整などを行うECプラットフォームとして、Shopifyは他の追随を許さないでしょう。

各国や地域に合わせた配送料の設定

海外のお客様への販売時には、配送料金の設定も気になる問題だと思います。ですが、Shopifyでは「配送プロファイル」という機能を利用することで、国や地域ごとに異なる配送料金を簡単に設定できます。

この機能は商品ごとにも利用できます。たとえば、大きな商品には特別な配送料を設定することが可能です。逆に、「〇〇〇円以上の購入で送料無料」といったプロモーション設定も細かく行うことができます。このような柔軟性と便利さが、Shopifyの魅力の一つです。

ストアのデザイン

またShopifyでは上記で設定したマーケットに応じたデザインまでも行えるようになりました。

この夏から利用できるようになったShopify Edition Summer 2023では、マーケットごとに異なるテーマテンプレートを設定する機能が追加されました。

これにより、一つのECストアでも、例えば日本とアメリカといった異なる市場で別々のページデザインを表示することが可能になりました。

この機能は非常に有用なものです。

なぜなら、ECストアのデザインはそのブランドの印象を大いに左右し、地域によって好まれるデザインが異なるからです。

また、マーケティングの観点からも、各国のお客様に適切なメッセージを届けることは重要な要素です。

なぜなら、「すでにそのブランド名や商品についての知識がある」お客様と、「そのブランド名を初めて見る」お客様では、必要とする情報やアプローチが異なるからです。

日本のマーケットとアメリカのマーケット

ここで簡単な例を紹介します。下図は、日本のアパレルブランド「MISEル」のShopifyサイトのカスタマイズの様子です。仮に、このブランドが日本でよく知られているブランドだとします。デフォルトのトップ画面には、スタイリッシュな男性のトップスが表示されています。また、「クリアランスセール」というテーマ内に組み込まれたメッセージを通じて、訪問者に対して特別なお得感を提供しています。

日本に向けてのデザイン (デフォルト)

アメリカ(北米)のマーケットに向けてのデザイン

しかし、このブランドは日本では認知度が高い一方で、北米ではまだ十分に知られていません。また、これが日本のブランドであることもまだ十分に理解されていません。そこで、北米市場向けのトップ画像をより日本を感じられるものに変更しました。

そして、テーマ内に組み込まれたメッセージを「Discover, Tokyo Styles.」に変更し、セール感よりも、これが日本のアパレルブランドであることを強調しました。また、「Tokyo」という文字を加えることで、原宿系など日本のファッションに興味のある北米の若者に対する興味を引き立てています。

Shopify では越境ECを行うにあたり、このようなこまめなプロモーション戦略を簡単に行えるようになりました。

上記はあくまでシンプルな一例ですが、市場に合わせてブランドのアピール方法を変えるというのはマーケティングでは初歩的なことで当たり前といって良いでしょう。

ですがこのような初歩的なこともシステムやリソースの都合などで、大きな企業しか行えなかったというのも、また一つの現実でした。

従来であれば、国や地域に合わせて別のストアフロントを用意するのは、余程予算があるような大きな国際的企業しかなかなか難しかったと思います。

ですが、 このShopifyの新しいマーケットに合わせたテーマデザインの変更は少ない学習コストやリソースで簡単に、現代的な越境ECのマーケティングを行えるようにしてくれます。

また自動翻訳などは規定数を超えると有料になってきますが、マーケット自体を追加するのに追加のコストはかかりません。

Shopify Plusを活用した多地域展開

Shopify Plusは、複数の国や地域に対して、各マーケットの特性に合わせたマーケティングを本格的に展開したい時に最適な選択です。

Shopify Plusでは1つの契約で最大10サイトまで開設が可能です。

(ただし、これは一つのブランドに限られ、異なるブランドに対しては別途契約が必要となります。)

この10サイトを1つの契約で構築できるという特徴は、多国籍展開を同時に進行する際に大変有利です。

Shopify Plus の日本の事例はShopify公式ブログにも紹介されています。

Shopify Plus 導入事例

またShopify Plus導入をご検討の方は弊社でもご相談承りますので、お気軽に問い合わせください。

サイトでの実例

では、言語やマーケットを設定したサイトがどのようなものになるのか、MISEルテーマを使ったデモサイトで簡単に紹介します。

ホームページ

日本のお客様へ向けてのホームページ(トップページ)はこのようなものになりました。セール情報や商品ラインナップ紹介を中心としています。

一方こちらは北米アメリカのマーケット用のデザインです。

日本のブランドとわかるようなイメージ・北米アメリカのお客様に対しては英語でのメッセージ・プロモーションのビデオの表示などを表示しています。

まずはブランドのことを知ってもらうことを優先したホームページ(トップページ)にしました。

商品ページ

こちらは日本のお客様への商品のページ。 日本語で入力したオリジナルの商品説明等が表示されています。

一方こちらは、北米アメリカ(英語)に向けての商品ページ。

「Translate & Adapt」で英語に翻訳した商品説明が表示されています。

また「カートに入れる」などのナビゲーションのためのワードも英語で表示されています。

日本語と英語でのストアフロント切り替え例

MISEルのデモサイトでの実例

MISEルではMISEルのテーマを使ったデモサイトをご用意しています。

Miseルデモストア

このデモストアでは「Translation & Adapt」 をつかって、日本語と英語で異なるストア表示ができるように設定してあります。

では、実際にどのように設定しているかを簡単に紹介します。

これらの設定はやや高度な設定です。まずオンラインストアのテーマエディタでの操作になれてから行うことをおすすめします

Translation & Adapt

Translation & Adapt を立ち上げると、先程紹介した商品の翻訳の他にもテンプレートという項目があります。

テンプレートという項目を選択すると、テンプレートで設定したテキスト項目や画像などを英語での表示の場合に切り替えることができるようになっています。

日本語と英語のテキスト対応

例えば日本語での表示では「ラストクリアランス」となっていたものを、英語に「last clearance」と、日本語と英語で対応させることができます。

これらの翻訳はTranslation & Adaptが提供している自動翻訳も使用できますし。

個別の項目を手動で翻訳することも可能です。

画像の対応

また日本語と英語で対応させるのは、なにもテキスト翻訳だけではありません。

画像も対応させることができます。テキストと同じように英語に対して別の画像を割り当てることができます。

上記のスクリーンショットを見てもらうと、日本語と英語では表示させる画像を変更してあるのが見えると思います。

これらの画像はテーマエディタで設定した画像です。例えばビルダーのプロモボックスなどです。

Translation Adapt 上ではそれぞれの項目に1586279874234: ImageなどのIDが割り振られて表示されています。ですがわかりにくい場合は、実際日本語(デフォルト)で表示されている画像が、どんなものかテーマエディタ画面などを確認しながら行うと良いでしょう。

上記では、トップサイト (idea homepage)のテンプレートのトップバナーやプロモボックスのバナー画像を日本語と英語で別のものにする設定を行いました。

では実際にデモサイトではどのように変化したかみてみましょう。

言語切替によるトップサイトの見た目の変化

日本語(デフォルト)

デフォルトでは下記のようなトップサイトです。

日本語でメッセージが表示され、バナーの写真も日本人のモデルが中心です。

英語

では、言語を切り替えてみます。

MISEルテーマでは「 テーマ設定→アプリと言語 」から言語のセレクター表示を切り替える事ができます。

ストアのメッセージが英語で表示され、バナーの写真も変わりました。

メッセージや画像は先程のTranslation & Adapt上で変更を行ったものです。

このようにShopifyではTranslation & Adaptのアプリを使うことによって、簡単に日本のユーザー向けの内容から英語ユーザー向けの内容に切り替えることが可能です。

また上記の例ではテンプレート内容の翻訳でしたが、テンプレート以外にもメニューなどももちろん英語に変えることができます。

ご注意: MISEルテーマユーザーご使用の方へ

これらの言語の切り替えを有効にするにはMISEルのテーマの設定だけでなく、Shopifyのストア側での設定ーマーケットや言語の設定を予め行っておく必要がありますのでご注意ください。

詳しくはShopifyのヘルプセンターをご覧ください。

まとめ

Shopifyを利用することで、グローバルに商品を売るというプロセスがぐっと身近になります。言語の設定から通貨の管理、送料の設定まで、お客様にとって使い心地の良いお店作りに必要なツールがいっぱい揃っています。

特に注目したいのは、最近導入されたマーケットに合わせたデザイン機能です。これが更に多くの人々を引きつける一助となることでしょう。

たった一つのECサイトで、ある地域ではセールをアピールし、別の地域ではブランドの背景やストーリーを強調するというような細やかな戦略が可能になりました。それぞれの商品を最良の方法で売るための道筋が見えてきます。

限られたリソースでも、それぞれの国や地域のお客様に寄り添ったプロモーション戦略を手軽に実現できるのは、多くの事業者にとって嬉しいニュースではないでしょうか。

これにより、自社のブランドや商品をより多くのお客様に知っていただくチャンスが広がり、ビジネスの成長へと繋がります。Shopifyはまさに、世界を一つにつなぎ、ビジネスの可能性を広げるツールと言えるでしょう。

 

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